スリーフィンガーテクニック

馬は双子の発症率が高い。

サラブレッド種は特に高く、10%程度だそうだ。

排卵促進剤を使うとより双子になりやすく、デスロレリンの場合では19.7%、hCGでも14.8%と報告されている。

 

写真のようにお互いに密着している場合には、一つの胎胞が成長せずに単胎となることもあるが、離れている場合にはほぼすべてがそのまま成長し、結果的に流産となることがほとんどだ。

 

いずれの場合でも、胎胞が子宮の中で動かなくなる排卵後15日以内に一方の胎胞を破砕する必要がある。

直腸からエコーで観察しながら実施するが、方法は先生によって様々。一方の胎胞を子宮角の先端まで追い込んで、そこで子宮を絞って破砕する方法が一般的だ。中には骨盤に押し付けて破砕する先生もいるようだ。

 

私の場合は、もっぱらスリーフィンガーテクニックを使っている。オーストラリアでDr. Angus McKinnonに教わった方法だ。

今年は種付けのスタートが遅いようだったが、数えてみたらすでに11頭実施した。

 

胎胞がくっついている場合でも、まずプローブを間に割り込ませて少し距離を取り、その後破砕したい方の胎胞を人差し指と薬指で固定し、中指を使ってプローブを押し付けて破砕する。

 

このやり方のメリットは、まず破砕状況をリアルタイムで観察できること。

 

そして処置時間が大抵の場合1-2分程度ですんでしまうこと(慣れが必要です)。馬房で馬栓棒を使った普通の直検の体制でできるし、鎮静剤を使うこともまずない。

 

さらに子宮体部の双胎であっても破砕が可能であることだ。

従来では、一方の胎胞を子宮体部から子宮角先端に追い込むことは大変な作業で、ほとんどの場合翌日まで放置して胎胞が子宮角に移動するのを期待するしかなかった。

 

また、一方がシストの可能性がある場合、胎胞の位置が内側か外側を問わず、どちらでも破砕のターゲットにできるのもメリットの一つかもしれない。

 

以前に調査したデータでは、処置後胎令3週と6週までの妊娠維持率は97.4%および94.2%と、単胎の場合と比べて若干劣るが有意な差はなく、従来の方法と比べても遜色はなかった。

 

慣れるまで何症例か必要だが、馬の臨床家の先生はぜひお試しください!